研究分野
コンピュータと高度な情報処理技術により、人と協調して働くことができる知的なシステムが現実となりつつあります。この共同作業がうまく働くためには、相手を正しく理解し、各々が望まれるタスクを果たすことが必要です。
この実現を目指した研究として、人の知的活動の限界や特徴を踏まえた上で、人と機械との豊かなコミュニケーションを可能とする環境(ヒューマン・インタフェース)を作り上げることに取り組んでいます。
研究テーマ
人と機械の協働のための認知工学的コミュニケーション支援
- 認知能力を拡張・支援するヒューマンインタフェース
- 複雑な状況の理解と迅速な対応のための情報提供と表示形態
- 空間認知とナビゲーション支援
- メンタルモデル・知識の獲得支援と学習法 etc...
関連授業
- ヒューマンインタフェース(情報科学類)
- 知能情報メディア実験 (情報科学類)
- 認知的インタフェース論(リスク・レジリエンス工学学位プログラム)
研究事例
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マルチロボットシステムの状態理解・操作のための認知的インタフェース
マルチロボットシステムとは、複数のロボットが相互に連携・協調し、目標を達成するシステムです。この操作には、全体の状態を把握・評価し、適切な指示を適時に各ロボットへ行う必要があります。このためには複雑かつ大量の情報を短時間で処理しなければなりませんが、人は限界がありますので何らかの失敗(ヒューマンエラー)が起きえます。
そこで、生態学的インタフェース(Ecological Interface Design: EID)の概念を採用したインタフェースを提案します。EIDとは、対象システムとの相互作用(やりとり)を、人にとって自然な形で行えることを目的としたヒューマンインタフェースの考え方です。
オペレータが独自に頭の中で考えていた状態理解の内容をモデル化し、これに基づき、システムの機能の状態を表示したインタフェースを作成しています。これにより、オペレータは頭で考えずとも、状態を直感的に理解できるようになると期待できます。
マルチロボットシステムを対象とした機能状態表示ディスプレイ
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ケータイの機能的理解に基づくトラブル回避のための学習支援法
近年、携帯電話は様々な機能を搭載し、生活の必需品となっています。しかし同時に、機能が複雑化したことで、利用者が機能の仕組みを理解することが難しくなっています。
このように複雑化する携帯電話システムに対して、適切な知識(メンタルモデル)を獲得し、機能の有効利用と利用に伴うリスクの回避が行えるような学習支援法を研究しています。
誰にでもわかりやすい説明形態を目指すため、生態学的インタフェース(EID)の考え方を応用し、直感的な理解を可能とする表現により内容の説明を行います。
EIDを応用した学習支援システム
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ランドマークの見つけやすさに着目した歩行者ナビゲーション・ガイダンス
携帯電話のGPS機能搭載が標準となり、GPSによる現在地測位を利用した歩行者ナビゲーションサービスが提供されています。しかしGPSには数m〜数10mの測位誤差があり、現在地が測位されるまでタイムラグが生じます。また高層ビルが立ち並ぶ場所や地下街など、GPSの衛星が隠れてしまう場所では、さらに現在地測位の精度が悪くなります。
このような状況下では、ナビゲーション利用者が「現在地がわからない」「どちらを向いているかわからない」といった不安に陥ることが予想されます。
本研究では、ランドマーク(店舗などの目印)の“見つけやすさ”を定量的に評価し、ランドマークの見つけやすい地点を経由するような経路探索を行うことで、歩行者の不安を軽減することを目指しています。
ランドマークの“見つけやすさ”の評価
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運転者の運転行動に合ったナビゲーション
カーナビゲーション画面への凝視による前方不注意が原因となった交通事故は年々増加しています。事故の危険性を低減させるための1つの手法として、情報提示方法を改善し、運転者の画面への注視時間を短縮させることが考えられます。
現在、カーナビゲーションには2次元地図と3次元地図が導入されていますが、運転者が画面を見る状況や目的、その際の注視時間等はまだ詳細には明らかにされていません。
前回の研究では、運転者の地図の使い方を把握し、運転に危険を及ぼす可能性のある箇所を検討しました。その結果、いくつかの問題点が明らかになりました。
今回はその中で、ランドマークが無く、見え難い交差点において、交差点の特定が困難であるという問題の解決方法を検討しています。
運転者の情報取得行動の分析
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複数音声内容の同時聴取を支援する情報提示方法
ITS(Intelligent Transport System)の普及に伴い、運転中のドライバに多くの情報がもたらされることとなりました。しかし、便利になった反面、増大する情報はドライバの混乱を招く可能性があると懸念されています。
カーナビやETC車載器などの異なる車載器から同時に音声が鳴ることで重要な情報を聞き逃してしまう恐れがあります。
この問題を解決するためには、複数の異なる車載器から発生する情報を1つのITS車載器で統合的に管理して、ドライバに対して適切な情報提示をしていかなければなりません。
人間が一度に聞いて理解できる音声数は限られています。本研究では、人間の特性や認知的な限界を考慮した情報提示方法を考えています。
様々な情報が同時に提供される状況を改善
(参考:国土技術政策総合研究所)
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歩行者ナビゲーションのランドマーク表示方法提案
歩行者の経路探索を補助するツールとして、歩行者ナビゲーションサービスが普及しています。 しかし、GPSの測位誤差や処理の遅延によって地図上に表示される現在位置と実際の場所とにずれが生じた場合や、地図上に表示されたランドマークを実空間内で特定できない場合などで利用者が不安を感じると報告されています。
一方、携帯電話は画面の表示領域が狭く、メモリ容量も少ないため、地図に表示されるランドマークを選択しなければなりません。現在、表示ランドマークの選択は主観に頼っており、実際には歩行者にとって見つけやすいランドマークではない可能性があります。
そこで、歩行者が見つけやすいランドマークを優先的に選択し表示することで、現在位置の特定を容易にし 利用者の不安が軽減できると考えています。
ランドマークの表示方法の検討
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方位を維持したデフォルメ路線図
駅の切符売り場で見かける路線図は、表示領域などの物理的制約の存在や、簡略化によって大きな変形が施されています。このようなデフォルメ路線図は、駅と路線の繋がりという位相関係を主に表示しており、距離や方位からは解放されています。
しかし、方位という座標系は地図を用いた探索行動において非常に重要なものであり、それは路線図においても同じことがいえると考えます。
そこで、駅の検索性の向上を図るため、方位を維持した路線図の生成方法を提案し、方位を維持する為に施した手法が、見る人にどのような影響を与えるかを確かめます。
方位を維持した路線図の生成方法
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筑波大学 認知支援システム研究室
Laboratory for Cognitively Sound Interactive Systems, University of Tsukuba